8年目の抜け道

先日の劇団会議で、メンバーの宮内君から聞いた事務所から帰るための抜け道がある。
8年間、あの事務所から自宅を目指して自転車を漕いでいるけど知らなかった道だ。教えてもらってからすでに一カ月くらい経とうとしている。習慣というのは怖いもので、教えてもらったその道を通らないんだよ、フルタは。仕事を終えて事務所を出発すると、無意識にいつもの道を走って帰ってしまう。で、気付く。「嗚呼、今日もまたあの道を試せなかった…」と。バカみたいにそんな夜が30回くらい続いた。続き過ぎた。

今夜は決意が違った。昼くらいから「俺は、今日、あの道を抜けて帰るんだ」と念じ続けた。忘れないように。その甲斐があって、帰る時、はっきりと憶えていた。というわけで、ようやくその抜け道を始めて走った。
恐る恐る、左に曲がらずまっすぐに道を抜けていく。知らぬ民家の間を抜けていく。ゴオオオオオ。ブン。ダアアアア。
あっという間にいつもの道まで出た。開眼。
それまで一番近道だと思い込んでいた道が、実はそうでなかった。知ったつもりでいたことが間違っていた。そういった類の典型を味わう。