僕のドラゴンボールだった

下北沢に流れた「大阪屋」閉店のニュース。
あれからなんとなく落ち着かず、閉店する1月30日(土)までに食べることができるかばかり考えて生きていた。
20時頃、仕事から下北沢に戻って店の前を通ると大行列。
たぶん2時間待ち。もしくは、それ以上な気がした。
雪が降るかもしれないという天気予報も関係なかった。
閉店を聞きつけた人が惜しんで並んでいる。
これが大阪屋の底力であり人気なのだと、目の当たりにして嬉しいやら悔しいやら。
ぐっと気持ちを静めて諦めて…事務所に戻って仕事。
ひと段落したのが23時。
さすがに完売していると思い、それでも後ろ髪をひかれるような思いで店の前まで行くと…まだやっている!
列はできていたけど、さっきの半分くらいの人数だったので思い切って並び始める。
間もなくしてお店のおばさんが出てくる。
一人一人に、何個たこ焼が食べたいか聞いていく。


「8個」
「15個」
「15個」
「8個」
「15個」


僕の番が来た。


「15個」


たこ焼は、僕までだった。
僕の後ろの人は買えずに帰ることに。
運が良かったのか最後の1パックを手に入れられる権利を得て並び続ける。
お店のおばさんがホッカイロをくれる。
暖を取りながら並んでいると、たこ焼きが品切れであることを知らない人が、僕の後ろにどんどん並んでくる。


「あのう…もうないらしいんですよ」


これを僕が言う役目になっていて、これがなんか辛く。
みんな、一様に崩れ落ちるように凹んで帰っていく。
僕が「たこ焼は俺までだ!帰れ!俺は食うけどな!」と追い返しているみたいで、なんとも気が重くなった。
かと言って、自分のたこ焼は譲れない。
これだけは譲れない。


おじさんとおばさんに感謝の気持ちを述べて、最後の一パックを受け取る。



東京に出てきて15年くらい経つけど、おそらく東京で食べた全ての外食フードの中で、間違いなく一番食べているのが、大阪屋のたこ焼。
下北沢に劇団の事務所を構えてからは加速していった。
週に2回くらい通ってしまった。
春、夏、秋、冬、20代からの30代、たこ焼を一緒に食べた色んな人のことも思い出した。
噛みしめるように、一つ一つ食べた。
これが最後なのかと思うと、泣きはしなかったけど、ため息が出た。
食べ物でこんな気持ちになるのは初めてだった。


こんな日の今朝、フルタ丸のサイトがリニューアルオープンした。
リニューアルにあたってSOYの皆様には大変お世話になりまして、おかげさまで素敵なサイトとなりました。

http://furutamaru.com/

ありがとうございました。
フルタ丸は、これからも一つ一つ演劇を創っていきます。