好きを分解せよ

音楽も映画もそうだけど、本当に好きになったものは何回も聴いたり何回も見てしまう。でも、全体を聴いたり見たりしているようで、実は音楽ならある一言の歌詞だけを心待ちにしていたり、映画ならたった1シーンだ。最終的に、そこまで作品を分解して「点」を好きになっている。その一瞬を味わいたいがために全部を聞いたり見たりしている。繰り返しが可能な表現はそういう喜びがある。
今、稽古している二人芝居「虎の館」は、生で見るしかない演劇だけれども誰かのそういう喜びと結びついてほしいという期待を込めている。


そういえば、家にぐちゃぐちゃの柿(正式名称が分からない)がある。
これは実家から渋柿の状態で送られてきて、それがひたすら熟すのを待ち、最終的に冷蔵庫で管理。
ここに至るまでずいぶん時間のかかる代物なんだけど、これまでは全く興味がなくて全部奥さんと娘にあげていた。
それをなぜか今年は食ってみようと思った。


ナイフとスプーンを用意して

ナイフで上部を真横にカット。

あとはスプーンでほじって食う。


なんじゃこりゃあ!
むちゃくちゃ美味いやないか。
もはや柿じゃない。
味も柿のようでいて、なんか違う。
試行錯誤の末に完成したかのようなデザート感。
ただ熟すのを待っただけでこうなるのか。
これを待ち続けて初めて食べた人、すごいな。
そこまで待てる人間でありたい。