べすとふぉー

何かって、甲子園ですよ。
ベスト4が出そろったことを、さっき事務所で確認して、あーもう終わってしまうのか…という寂しさを、なんとか紛らわせようとしてる。
どこが優勝してもおかしくない4校。
早稲田実業の清宮は、久しぶりに出て来た「ビックマウスだけど結果が伴ってしまうやーつ」という、一時の本田みたいな痛快さがある。
日本人は好きなんだよね、こういうスポーツ選手が。
不言実行の奴よりも有言実行の奴の方が、結果がエンターテイメントに昇華する。
僕らが求めているのは、端正で美しいヒーローじゃない。
トゲトゲしくて生意気な悪童。ビックマウスに比例しない結果を出せば、すぐにでも揚げ足を取りたくなるようなやつ。だから、清宮は良い。全部を持ってる。おまけに、動員力がすごい。清宮を見たい人で甲子園をパンパンにしてしまう。この大会が終わったら、いきなり野球部辞めて演劇部に入んないかな。間違いなく高校演劇の歴史を変えそうだ。


僕は高校1年生の時、夏までのわずか4か月間だけ高校球児だった。
あの日、先輩たちが予選に負けた日、重い空気のまま、バスが岐阜の長良川球場を出発。僕の通っていた母校まで戻ること30分間。あの居た堪れない空間は後にも先にもない。
その後、晩飯に全体での食事会が企画されていて、監督の挨拶を前に皆で冷えたまっずいメシを食った。その時、すでに僕は野球部を辞めようと決めていたので、感傷に浸ることもなく早く帰りたくてしょうがなかった。でも、同級生たちは、俺たちの世代が始まるぜと息巻いていて、だいぶ心に距離があったなと思う。


2年生だった一つ上の先輩で、補欠だけどやたら元気な人がいた。名前は思い出せない。ノックの守備練習の時に「ナイスプレイ〜!」と言う代わりに、「良い目だ〜!」と、青春の象徴である輝いた目を褒めるというボケを持っていた。
当時、僕はそれに笑っていたのか、それとも「ケッ」と思っていたのか。
それさえも思い出すことができない。もう記憶の彼方で迷子になっている。けど、そのボケをふいに思い出してしまったので、こうして書いている。オチはない。


つまり、僕は高校球児としてポンコツであり、4か月で辞めたどうしようもないクズだった。それは大きな後悔として残っていて、岐阜から東京までカバンに入れて持ってきてしまった。後悔は、スライムのように形を変えて劇団になった。


それはそうと、「熱闘甲子園」のテーマ曲を、スーパーフライが歌っているんだけど、僕はムチャクチャ嫉妬してる。

僕はミュージシャンでもないのに。
嫉妬は自由だから、いいか。


外は雨。雨音が、落ち着く。