ヨーイ、ドン

事務所から帰る道に直線コースがある。
あまり車が走らない車道で、その脇を僕は自転車をこいでいつも帰る。
今夜もそうだった。
考え事をしながら、ブツブツ言いながら、家を目指していた。
すると、車道を挟んだ反対側を、4人の大学生グループが歩いている。
男2人と女2人。いわゆる、2対2だ。
どんな関係性なのかは分からないけど、たぶん、友人関係の4人に見えた。
4人が横一列に並んだかと思うと、
1人の男が大きな声で


「ヨーーーーーイ、ドン!」


4人は一斉に直線を走り出した。
等間隔に立つ街灯の下をまっすぐに。
その時のみずみずしさを、
もう荒んでいる僕はどうやって書いたらいいのか分からない。
あまりにもみずみずしく、胸が痛んだ。


走り出した4人は、順番に脱落者を生んでいった。
まず、1人の女が歩みを止め、その直後、1人の男も止まった。
2人とも息が上がっていた。


しかし、あとの2人は立ち止まる所なく
どこまでも走り続けている。
男1人、女1人。


いつしか後方の2人はペアになり歩き出し、
「あいつら、バカじゃねぇの」
と笑い合う。


前方とは、かなりの差が生まれている。
走り続けた2人は、どちらからともなく歩き出していた。
そして、こちらも計ったかのように、ペアになっていた。


僕はその横を自転車で並走し、順番に追い越して行った。
ただ、ただそれだけのことである。