お前はもう終わりだ

先日、カレー鍋の素を買いに行った時のことだ。
下北沢の某スーパーで、カレー鍋の素を必死に探したが、自分のサーチ力では見つからなかった。
目の前を通りかかった男の店員に尋ねた。


「カレー鍋の素、どこですかねぇ」
「少々、お待ちください」


店員は、店内の鍋スープが置いてあるところを血眼になり探してくれた。けど、結局どこにも見つからなかった。
季節も季節だし、なくなったんだろうと思い、僕は諦めた。
店員は「すいません」と言い、僕から離れていった。
代わりに何の素にするべきか。
僕は考えあぐねながら、しばらく鍋コーナーにいた。


すると、上司らしき男が、さっきの店員を捕まえていた。


「探すの諦めたの?」
「…」
「お前、何様なの?」
「…」
「お前、偉いの?」


さっきの僕への対応を非難されていることが分かった。
いや、あの店員はしっかり探してくれた。それでも、いびりは続く。


「あきらめたところで、終わりだって」
「…はい」
「諦めてんじゃねぇよ」
「…はい」
「いや、お前はもう終わりだよ」
「……」
「終わりだ」
「……」
「終わりだな!」


店員は黙ったまま、無視するような形で上司の元から離れた。


「おい、逃げるのか!」
「俺、そういう冗談とか通じないタイプなんで」
「…」
「俺、今、すげぇ凹んでるんで」


店員は頭をかきむしり、行ってしまった。


僕がカレー鍋の素を欲しがったばかりに、いさかいが起きた。
なんか受け止めきれず、しばらく心がザワザワしていた。