君はウキウキを隠していた

雪が降った翌朝の東京は、ちびっこにとっては残酷な光景だ。
だって、雪がすんげえ勢いで溶けてるわけだから。
犬の散歩中に、おそらくちびっ子が昨晩の内に作ったであろう雪だるまがあった。
もうだいぶ溶けていて、かろうじて骨格だけが残っていたソレは、完全にエイリアンみたいになっていた。
ジョンと一緒に手を合わせた。残酷だ。


一方の大人はどうだい?
「雪がやっかいだなー寒いなー」なんて顔をしながら心の底では雪が嬉しい人がいる。
っていうか、そうゆう人とよくすれ違う。
だって、顔がほころんじゃっているんだもの。
でも、大人であるという手前、無邪気に喜べない。
それをごまかしている。
ウキウキをごまかしている。
残酷だ。自分の中のウキウキに失礼だ。


どうでもいいことを思い出した。
ちょっと前にちらっと書いた大学生の時の東京ドームでのバイト。
内容はしょうもないので割愛する。時給はいいがしょうもないバイトだった。


実は、そこで、今のフルタ丸メンバーである宮内に会ったわけだが、
彼がフルタ丸に加入するのは、だいぶ先のことだ。その話はいずれ。


その日、そこのバイト先に、もうひとり、名前は忘れてしまったけど、
なんか斜に構えているイケすかねぇやつがいた。


ボクは新人だったので、はいはいと言いながら従っていた。
東京ドームのバックステージで弁当を食っていると、
売り子がドリンクの補充をしにやってくる。
キャバクラのように、可愛い子から、おっさんおよび男性は買いたいもんだから、可愛い子は忙しい。
しょっしゅうやってくる。
ボクは気が気ではなかったよ。
売り子たちは汗をかいているし、女子の部活の部室みたいなもわーんとした何かが見えた。
蜃気楼だ。夢の蜃気楼。
そんなところで弁当を食っているわけだから、唐揚げ頬張りながらチラチラ、主にケツを見ていた。


すると、隣で弁当を食っていた、そのイケすかねえ野郎はこう言った。


「あの子たち、たまに階段のところでもたれかかって休んでるんですよね。そうゆうの見ると、がんばれって思うんですよ。」


こいつはウキウキを隠していると思った。
イケすかねえから。
そいつのことがますます嫌いになった瞬間だった。