この奇跡に何と名前を付けよう

事務所に置いたままになっていたスニーカーがある。
そろそろ家に持って帰らねばと思い、特に袋にも入れず素手で掴んで下北沢の街を抜けていった。
こんな日に限って荷物が多く、バックを背負い、両腕に袋をぶら下げていた。
すでに「どうして靴なんて持って出てしまったのか」と悔い始めていた。
満員電車でむき出しのスニーカーを手に持っているというのは、たいそう人の迷惑にもなった。
精神的にはボロボロになったまま家に向かっていた。
夕飯を買うことにした。
弁当を買った。さらに荷物が増えた。
この際だ。茶月の茶碗蒸しも買おう。あれは美味い。荷物が増えた。
スニーカーがとてつもなく邪魔だった。
そして、足が自宅の方へ向かった直後でした。


履いていたサンダルの鼻緒が「ブチッン!」


この奇跡に何と名前を付けようか。
僕はサンダルを脱いだ3秒後に、手に持っていたスニーカーを履いた。


然るべきものは然るべき所へ落ち着く。何事も。人生とかそうゆうやつも。たぶん。