くすぶり
事務所近くにある花屋はクリスマスイブの朝から大々的に正月飾りを売ってた。
道理でこの街にいるとクリスマスを感じるのが下手になるわけだ。
一日中、事務所にこもり、仕事しながらくすぶっていた。
昼飯に餃子の王将で食った天津飯。
あの酸っぱさがくすぶりを助長させた。
くすぶり。
この状態と感情とずっと付き合っている。
もうかれこれ何年になるんだろう。
もはやイイ友達だ。
いや、友達じゃねぇな。腐れ縁。
いつも縁を切りたいと思うのに切れない。
ずっといる。
夜、大槻くんのバンド・PALESSのライブを観に中野へ行った。
PALESSの二つ前に出ていた名前の知らないバンド。
ボーカルの人の一挙手一投足に目を奪われる。
色気だ。
あれは色気。
ギターの弾き方とかスピード。
たまらなかった。
肉眼でロックを久しぶりに観た。
大槻君が大昔に作った曲に『世界と君』という曲がある。
当時は大量に曲の入ったCD-Rを渡されて、その中で特に気にも留めていなかった曲だが、
最近よく聴いている。
ギターの轟音から始まり、そこに歌詞が降ってくる。
「君が泣いていると〜野良猫が教えてくれたから〜
僕は君と行くよ〜ナントカの場所へーーーーーーーーーーーーー!!!」
ナントカの部分はよく聞き取れない。
この曲には確実に「くすぶり」があって、そこに大槻くんがいる。
何歳の大槻くんが知らないが、彼がそこにいる。
息遣いとか気持ちが閉じ込められていて息苦しい感じさえする。
でも、息苦しさと同時に安心もする。
その声が転覆を狙っている。
いつだって男は逆転のホームランを狙っている。
そんな気持ちを肯定してくれる。
大槻君、ありがとう。