刺激と蕎麦

仲良くさせてもらっているS大学のM先生が、映画監督の林海象さんと講演会をやるということでS大学に遊びに行った。
その大学は吉祥寺にあった。吉祥寺という街は駅前から一歩外れると、僕にとってはもう未開の地。
知らない街は東京であっても新鮮だ。歩いてるだけですでに楽しい。

大学に立ち入ると、芝生が広がり宇宙船みたいな近代的な図書館が構えていた。
夏の夕暮れのキャンパスはいい雰囲気。


会場にはH先生もいらっしゃって、一緒に講演会を聞く。
大学でこうして誰かの話を聞くのなんてたぶん卒業して以来初めて。
林海象さんの監督作品『THE CODE/暗号』も先日観たばかりだったので色々と面白い。


講演会の後は、近所にある謎のそば屋で打ち上げが行われたので僕も参加。
林海象さんや、M先生のご友人でもある俳優の麿赤児さんもいらっしゃった。
お酒を飲んで色々な話を聞く。
M先生が僕を紹介してくれる。

「こいつはフルタ丸という劇団をやってるフルタって奴だ」

僕は自己紹介をする度に、改めて自分のアイデンティティーが頭をかすめた。
今ここにいる僕という人間はどんなやつなのか。
そんなことばかりが頭に浮かんだ。そば屋で。
僕はなんとちっぽけな存在なのか。
湧き出てくるそんな思いが悔しかった。


刺激と蕎麦。


実にツルツルした夜。
やるべきことをやろう。

M先生、ありがとうございました。