くろねこ

ふだん走っている多摩川沿いのジョギングコース。多摩水道橋のそばに、いつも黒猫がいる。今日もいた。
中学生の時に「黒猫を見ると不吉なことがある」と聞いて以来、ずっとそれを信じたまま大人になってしまったので、それを回避するための儀式に時間が掛かってしまう。
それは何かというと、見てしまったら、三秒以内にツバを三回吐くこと。そして、両手の人差し指を合わせて、そこを右手の親指で10回切ること。これがワンセットだ。僕は走りながら、これをやることになる。見てしまったのだからしょうがないのだ。この儀式に根拠は何もない。そして、黒猫は何にも悪くない。ただただ、これをやらなければいけないという強迫観念。なんでこんな人間になってしまったんだろう。激しく後悔している。
たまに黒猫ばかりが3匹いる時があるのだが、こうなるともう大変だ。3匹だから、当然、3セットやらなければいけない。ツバを連続で9回吐き、指きりは30回やることになる。口の中はカラカラになり、指はヘンな方向につりそうになる。
その儀式の間、僕は他のマラソンランナーともすれ違うが、彼らはそんな僕をどんなふうに思っているのか。冷静に考えれば、気が狂った人間にしか見えない。
うーん。しかし、やめられそうにもない。