かんぱち

上京してすぐに「環八」という言葉を聞いた時、それがどんな意味を指す言葉なのかよく分からなかった。
確か、海の魚を真っ先に起想したはずだ。しかし、やがて、それが道路の意味であることを知り、「かんじょう」というのは「感情」ではなく「環状」であると。その頃には、すっかり、環七の存在にも気付いていた。東京は、環状7号と環状8号に出れば、たいがいどこへでも行けることも知った。何かしらの通りとぶつかっているからだ。
いったん、意味が分かると、今度はやたらと「かんぱち、かんぱち」と言いたくなった。道路を知っている男はカッコイイという妙な先入観があったせいだ。が、環八を知った所で、全くモテなかった。それは環七を知った所でも同じだった。

話はそれたが、以前、住んでいた杉並区の八幡山の環八沿いに「ドンキホーテ」がある。
僕が大学4年生だった頃、放火により焼けてしまったことも大きなニュースになった。僕の東京生活は、ここで買った色々なものが出発点になっている。自転車もそうだし、トイレを掃除するやつもそうだし、ハンガーとか。大学に通い始めた頃は、よく行ったものだ。牛乳も卵も買った。だから、特別な場所だ。

フルタ丸の第三回公演『広末が、俺に。』を上演した時、オープニングに犬のぬいぐるみが7体とクマのぬいぐるみが1体登場した。本物サイズのリアルな犬のぬいぐるみだった。一体・4000円ぐらいした。それも、このドンキホーテで購入したのだ。あの時は、店の人に不審がられた。レジに、犬を7匹とクマを1匹連れた男が現れたのだ。想像に難くない。
「犬のぬいぐるみ7体に囲まれているクマのぬいぐるみ」というその意味不明さが面白いと思い、舞台上に登場させたのだが、全くウケなかった。誰も笑わなかった。あの一瞬のために、30000円も掛けたのに。くそう。公演後、絶望的な気持ちでダンボールに犬のぬいぐるみを詰めて、実家に送ったときは、今度は母親に不審がられた。
と、まぁ色々な思い出をこのドンキホーテは持っている。

今夜、ずいぶん久しぶりに行った。
夜に、ふと電化製品がほしくなって、すぐに買いに行けるのはドンキホーテしかないと思う。
それと、不思議とドンキホーテで購入した激安家電(聞いたこともないメーカー)は壊れにくい。
雑草魂だと思う。

バナナジュースを作るためのミキサーを購入。