神保町

朝からパソコンにむかう。
あっという間に夕方になった。
そのまま続きを考えあぐねたい気持ちがあり、後ろ髪を引かれるような思いもあったが、神保町へと向った。



以前、ひょんなことで知り合った山野くんと久しぶりに会う。
彼は24歳でコンサルティングの仕事をしている。正直、コンサルティングという仕事が何なのか、僕は最近までよく知らなかった。
しかし、僕は起業するわけでもないので、そんな相談をするわけではないのだ。
香川出身である彼を、どうしても神保町のうどん屋「丸香」へ連れて行きたかったのだ。
彼にあそこのうどんを食ってもらいたかった。



今日も丸香は、繁盛していた。
僕らはテーブルに並んで、うどんをすすった。
そのうどんのコシに、山野くんが唸った。

「ここは通えますねぇ」

僕は気分が良かった。
別に僕が捏ねたうどんでもないのだが、
完全に「俺のうどんが褒められた」という気持ちになっていた。



うどんを食い終わっても、テーブルに座り続け、
「彼女がほしい」という山野くんの悩みに対するコンサルティングが始まった。
人の数だけ、色んな恋愛が始まり、色んな恋愛が終わるのだなぁということを改めて思った。



仕事に戻る彼と別れて、ひとり神保町をぶらついた。

「まわるお寿司」は、まだ健在だった。
明治大学のアートスタジオでフルタ丸公演をやっていた頃、
帰り道とかに、みんなと行ったのだ。
そうだ。
第4回公演『鹿を洗え』の時だったか、川瀬さんが芝居を観に来た母から1万円をもらい
そのお金を軍資金に、和田、トモキの4人で寿司を食いに行ったことがあった。
後にも先にも、あんなにふざけて寿司を注文したことはない。
そして、寿司屋でふざけるとあんなにも面白いんだということも知った。
あれは貴重な経験であった。

夏の神保町。その小道には神様がいる。間違いなくいる。