演劇おじさん
36歳。もうすぐ37歳。
僕は着実に演劇おじさんになりつつある。
色々な所で色々な形で色々な演劇に関わらせて頂くようになっても、
劇団の本公演だけは劇団を始めた大学生の頃に戻る。マインドが。
準備をしている時、稽古をしている時、あと何回稽古できるんだっけ?と指折り数える時。
何とも言えぬ不安がやってくる。
その直後には猛烈な自信もやってくる。
不安と自信。
大学生の根拠なき専売特許の二輪。
その二輪で動くバイクらしきのりもの。
それに劇団と名付けるならば、僕はまだその劇団に乗り続けている。
そのことが、今、とてつもなく有難いなと思う。
こういう勝負ができることが誇らしい。
本公演がやってくる。
やってくるんだなぁ、今年も。
長年、ずっと演劇作品の舞台にしたかった住宅展示場という場所。
そこで繰り広げられる異色のホームドラマ。
劇団フルタ丸 2018年本公演
『寂しい時だけでいいから』
5月30日(水)〜6月3日(日)
@浅草九劇
チケットのご予約はコチラから
⇒https://www.quartet-online.net/ticket/furutamaru2018?m=0fbbhci
有難いことに6月3日(日)の千秋楽は完売。
他の日時は、まだご予約受付中です。
本公演ってナンだろうか、雪降る祝日に。
劇団のことを書き始めたら書くべきこと、書きたいことはきっと山のようにある。
メンバーとは昔ほどは、年中、顔を突き合わせているわけでもなくなった。
会議やら何やらで定期的に会っている方だとは思うが、それでも4年くらい前までの狂ったように劇団公演をやっていた頃に比べれば鳴りを潜めた。
それぞれの活動や生活に少しずつ重きが移ろっているのかもしれない。年齢と共に、劇団の活動の形も変わっていく。
それでも絶対に譲れないのは本公演だ。
もうずいぶん昔だけど、かつてのメンバーに言われた。出演するかしないかはその都度決めたいと。僕はその申し出を断固として拒否した。
僕も若かったし、許容する心持ちもなかったんだろうね。
でも、その考えは今でも全く変わらない。僕等みたいなサイズの劇団の場合、本公演は劇団メンバー全員でやることが必須だと考えている。
そこがバラバラになるんだったら、本公演と銘を打ってはやれない。
本公演は「これがフルタ丸ですよ」という逃げの許されない最新のフルタ丸を見せる公演だ。
作品を見せているのと同時に劇団を見せている。僕がやりたいのは、そういうことだ。
ストーリーは作品にあり、やはり同時に、劇団にもある。そこは1セットであって、もっとも大事な所。
それと、いつからか本公演のナンバーリングを止めてしまった。それまでは「第〇回公演」と数えていたのに、もうどうでもよくなった。
回数を眺めて悦に浸るわけでもないし、何の意味もない気がしてしまって。
前置きが長くなったが、5月末に本公演を開催する。
冠は「劇団フルタ丸 2018年本公演」だ。
一年に一本。これが今の劇団フルタ丸で、メンバー全員の精力を注ぎ「うわああああっ!」と本公演を作ることができる本数だ。
僕も今の自分ができるベストの作劇と演出をぶちこみたいし、メンバーそれぞれが一年間に培ったものを持ち寄り、最新のフルタ丸を作り上げられれば言うことない。
お客さんに最高の気分になってもらいたい。いつも考えていることは、それだけです。
2018年本公演『寂しい時だけでいいから』
三月の散文
下北沢の事務所は、まだ底冷えがする。
今日もストーブを付けて、一昨年に上演した『ビッグマウス症候群』の平野BGMをエンドレスリピート。平野さんの曲は定期的に聞きたくなる。なんでこんなにも良いんだろうか。優しさと追憶と希望。全部入ってる。おまけに中毒性がある。感覚派の平野さんにしか作れない。映像なんか見返さなくても、東京と岐阜でやった公演を思い出せる。不思議だ。良いな。みたいなことを、僕は定期的に書いてる気がしてきた。いや、もう5、6回書いてるわ。それだけ良いってことなんだ。思ったことは何回も書く。
気になって仕方ないプロ野球オープン戦を横目に、仕事したりフルタ丸の準備をしている内に一日が終わってしまい、娘と何にも話してない日があったりする。もうすぐ一年生が終わり、二年生になるのだな。まだ一日も学校を休んでないことを誇らしく報告してきた。これは僕が暗に伝え続けていた帝王学。僕も学校を休まなかったのが唯一の自慢。
「ゆにばーす」というお笑いコンビがM−1グランプリで優勝したらコンビを引退すると明言していることを知って気になった。どんな覚悟であっても、覚悟を決めたやつからどうにかなっていく世界。演劇も同じか。
エイジング真っ最中の我々
今、激烈に世の中に疎くなっている。メジャーリーガーだった青木がヤクルトに復帰したことも知らず、聞いて驚いたばかりだ。プロ野球の話はさておき、気付けば「虎の館」の稽古も佳境に入った。
昨日は稽古場に舞台セットを運び込み、その中で稽古を試みた。
およそ2年ぶりに対面する舞台セットは、まるで古道具みたいに手に馴染む。触りながら、動かしながら色んなことを思い出す。3年掛けて、一つの舞台セットをメンテナンスしながら使い続ける。こんなことやったことがない。革製品のように、舞台セットもエイジングと捉える。味を出していく。人間もそうだね。みんな、エイジングだよ。老けて、更けて、深けていくのか。
ここ最近、ほぼ毎日、山田、清水、フルタは3人で一緒にいる。稽古の合間に3人でラジオに出演したり、なぜか店に立ちフルタ式ゴーヤチャンプルーを作ったりもした。
この夜は人生で初めて料理長を名乗った。道場六三郎のポジションだ。オリジナルのフードをお客さんに振舞う経験すら初めてだった。このBARバベルでの虎営業はどう考えても楽しかった。お客さんや知人、友人とこんな形で築くコミュニケーションもあるんだなということをこの年になって実感した。この経験は我々3人にとっても良かった気がする。
何はともあれ、今週末には本番。
今日は稽古休み。一日中、事務所に籠って準備だ。心して準備する。
TPAM2018 横浜公演
『虎の館』
2月10日(土)・11日(日)・17日(土)・18日(日)
会場:アーキシップライブラリー&カフェ(関内徒歩5分)
⇒虎の館公式サイト
チケットのご予約、受付中!こちらからどうぞ。
⇒https://www.quartet-online.net/ticket/tora
トラディショナルな横浜で虎と。
禁断の後記。そして、虎へ。
ひらフル「禁断のボーダーライン」が終幕。ご来場ありがとうございました。
終わったので、少しだけ後記的なものを。
今回、国境線というテーマで演劇を作ることになり、国に翻弄される人間のドラマになった。自分が書きたいのは人間ドラマであり、右往左往する人間の可笑しみであり、変化なんだなということを改めて思いました。
単純な2国の国境線ではなく、大国のエルぺニア、かつてその属国だったデントとスロブ、この3国の緩衝地帯の国境線を描くことに決めました。元ネタになっている国は、昨今の世界情勢を見れば一つ有名なのがあるけども、色々と調べる内に3つくらいの情勢をブレンドして作り込んで行った。なので厳密には特定の国はないのかもしれない。お客さんからの質問で、この3国の名前の由来をよく聞かれたので、お答えします。
エルぺニアはエンペラー(皇帝)、デントはレジデント(市民)、スロブはスレイブ(奴隷)です。有名な3すくみ。カイジでもEカードになっている。「皇帝」は「市民」に勝ち、「市民」は「奴隷」に勝つ。失うもののない奴隷は、唯一「皇帝」を刺すことができる。この3すくみを3国を描く時に意識してました。皇帝が一番嫌がることは、市民と奴隷が手を結ぶことではないかな、とか。
演出面のことで言えば、国境線という広大な場所を想像させる作品を、シアター711のステージ上で成立させなければならないため、3本の国境線を舞台上に交差させようと早々に決めました。これは3国の緩衝地帯であることを表しながら、区画のゾーンを分けながら、前後の高低差でも見せられないかと考えたからでした。それが結構難しく、稽古場で役者の皆さんと目線、角度、そういったルールを共有して、あーでもない、こーでもない、と議論を重ねて作り込んでいった。
ネタで言えば、ボッチがリンスを誘った文句「良いスペースへ!」の「良いスペース」とは、いったい何なのか?そのスペースにはきっとルマンドがあったり、クロスワードパズルがあったり、モフモフした肌触りの毛足の長いクッションがあるんじゃないかと思っています。いや、ないかもしれないです。
書き出したらキリがない気がしてきたので、雑記もこのへんで。ありがとうございました。
今日からTPAM2018「虎の館」の集中稽古。数年前から、この作品を再演するために生きて来た。三人芝居で送るミステリー喜劇。
【虎の館STORY】
建築士の師匠(ヤマダ)と弟子(シミズ)が在籍する山田建築事務所。プロレスをこよなく愛する二人は、仕事がない日はプロレスをして過ごしていた。そんなある日、編集者を名乗る男(ハナマキ)がやって来る。二人は久しぶりの仕事に構えていると、男は全く予期せぬ依頼を口にした。
「ミステリーの密室トリックを考えてもらえませんか?」
<作・演出> フルタジュン
<出演> 山田伊久磨/清水洋介/フルタジュン
≪公演日時≫
2月10日(土)16:00/19:00
2月11日(日)14:00/18:00
2月17日(土)14:00/18:00
2月18日(日)14:00/18:00
※受付開始・開場は上記開演の30分前
≪会場≫
アーキシップ ライブラリー&カフェ(横浜市中区吉田町4-9)
※JR関内駅から徒歩5分
≪チケット料金≫
■一般前売券・当日券:2,800円
※日時指定・全席自由
≪チケット予約方法≫
下記の予約フォームからご予約下さい。
https://www.quartet-online.net/ticket/tora(カルテットオンライン)
ご来場お待ちしておりまっす。
新春Oasis
何かしら台本を書いている時は、テーマ曲を勝手に設定するというやり方がある。
迷いが生じたら、1つの指針になりうるからだ。
けど、そんなテーマ曲が見つかる時もあれば、見つからぬままガシガシと書き進める時もある。
そういう時、たいてい僕はOasisを聴く。
「Whatever」 「Don’t Look Back In Anger」「Stand By Me」あげて行けばキリがない。
書いている作品のテーマに合っていなくても関係ない。
Oasisの曲冒頭から弾けるポップさに、王道さに、涙したくなる。
嗚呼、僕が演劇で創りたいのは、突き詰めればこれだと。この姿勢であると。
誰にでも分かる良さ、誰にでも分かる表現、誰の心も撃ち抜く何か。
今年もそれをひたすら考えながら台本を書きながら一年が始まった。
いい年にする。いい年になれ。精進します。