ツクリモノ

演劇はツクリモノなので、言ってしまうとニセモノなんですが、ニセモノの物語の登場人物を演じる役者さんは生きている生身のホンモノであり、それを実現させるために動いて下さるスタッフの皆さんも生身のホンモノ。
入口では、ニセモノとホンモノは、そんなバランス。
けど、次第にそのバランスが変わってくる。
ニセモノをホンモノに変えようとするのが稽古であり、ツクリモノの準備期間。
血の通ったホンモノの人間が頭と体を使って、物語というニセモノに挑む。
その果ての出口で、ニセモノなのにホンモノを越える瞬間がやってきたりする。それはニセモノだから越えられたとも言えるし、越えるべきニセモノだった、越えることに堪えうるニセモノだった。
そんなことを考えながら、台本を書いていることが多い。
ならば、とびっきりの嘘やニセモノを用意できるクソみたいなペテン師でありたい。