感動していた。

少し前だったか、
カフェにて仕事をしていた時だ。


目の前に4人掛けテーブルがあって、
そこに仕事帰りと思しきOLが座っていた。
まもなくして、もう1人のOLがやってきた。さらに、もう1人のOLも。
3人はユーチューブを再生しながら
控え目に振付っぽい踊りを確認し始めた。
その内、一番最初に来ていたOLが、椅子でそのまま俯くように眠ってしまった。
相当に疲れていたのかもしれない。
2人は特に起こそうとしない。
眠らせておいてあげようといった感じ。


そこに、遅れて最後の1人。
同じく仕事帰りのサラリーマンがやってきた。


「こいつ、寝てるじゃん…」


そんな声で、寝ていた女性も目を覚ます。
4人はどうやら、友人の結婚式で余興を任されていることが分かって来る。


なんてことはない、そんな光景を見ながら、
僕は感動していた。


僕は前々から、結婚式の余興で、友人達が繰り広げる
「皆で今の流行の歌を、下手なりにも頑張って精一杯歌う」という図がどうしても苦手だった。
この類の余興の歴史はきっと古い。『てんとう虫のサンバ』から『ももクロ』まで。
見ている方に迫って来る、そこはかとない気恥ずかしさと
やっている側の精一杯さと
それでもノレない自分と
そもそも否定できない感と。
上手く言えないけど、自分にとっては、なんかつらい時間だった。
僕がカラオケとかを楽しめるタイプだったら違ったのかもしれないが。


そんなどうしようもないフルタが、
感動していた。


共に学校を卒業し、
友人が結婚する連絡を受け取り、
連絡を取り合り、
仕事帰りの疲れた中でカフェに集まり、
慣れない振付を必死に習得しようとする。
その根底に流れるのは
お互いのことを知り尽くしている信頼感からくる安心感。


これまで自分が否定していたものが、自分が好きなものだった。
ただ単に羨ましかっただけなのかもしれない。
だとしたら、僕は相当に性質が悪い。