バイオリンの弾き方

ぼくは真面目なんである。
演劇の世界では、けっこう珍しいらしい。
ってことに気付いたのは最近だ。
だから、もっと真面目になってやろうと思っているのだ。
人生は大衆との逆張りでいきたいんだ。
いんや、ただの天の邪鬼だ。


真面目がやることと言えば準備だ。
ぼくは準備をする。
けっこうちゃんとする。
しかし、準備をちゃんとしたからと言って、
それ相応の結果が出るとは限らない。
これまでを顧みても限らなかった。
ってあたりが憎い。
ずっとそんな感じで生きてきた。


「アリとキリギリス」でたとえるなら、
ぼくはアリのくせに
夏になればバイオリンを弾いていたいタイプだった。
キリギリスを横目で馬鹿にしながら。
しかし、バイオリンってやつはキリギリスにしかイイ音が出せないようだった。
悔しかったねぇ。
ほんと悔しかった。


今年、ぼくにも何度目かの夏が来た。
劇団やりながら、こんなにも夏を過ごせるとは思っていなかった。


チャンスってやつは何回もないと思う。
でも、最低一回か二回は必ずある。


今回はそのチャンス。
ぼくはそう思っている。
これを逃したら、もうないような気もしてる。


だからこそ、アリとしてバイオリンを弾きたい。
というか、この弾き方しか分からねぇんだ。