こんな一日だった

早朝の築地は極寒だった。


永井くんと待ち合わせて寿司を食いに出かけた。
フルタ丸の前回公演ではモテモテの男を演じた彼だ。


約束はずいぶん前に交わしたまま、果たせぬままになっていた。
しかし、寿司を食いたい気持ちは沸点に達していた。


久しぶりに会った彼は夜勤上がりで顔が白かった。
市場場内をふらふら歩いて寿司屋を探す。


あいかわらず無法地帯で、車がおっかないスピードでビュンビュン走る。
この街では轢かれた方が悪いのだ。


すると


「バンっ!」という破裂音。


車にぶつかったスクーターみたいな乗り物。
車のバンパーがバコっとはがれ落ちてた。


この街では壊した方ではなく壊れた方が悪い。


それを証拠に壊した方の漁師たちは、壊れた車に爆笑していた。
南米か、築地か。
ってぐらいに危険な街だ。


せまい店内が満員だった寿司屋をみつけて寿司を食った。
たまたま見つけた寿司屋だったが、店内には有名人のサインがずらっと並べられていて
その中にひと際目立つ画力で魚を描いているものがあった。


サカナくん、だった。


寿司は文句なしの美味であり、
「美味い、美味い」と言い合いながら完食。


宝石のように盛られたウニが忘れられない。


築地を出た僕らは銀座へ。


「この近くに、加藤さんが働いている所があるんすよ」


永井くんに促されるまま、これまたフルタ丸に客演してくれた女優の加藤さんに会いに行った。
朝8時の銀座で会うことができた。
仕事前の彼女を半分応援して、半分からかって別れた。
加藤さんは朝からテンションがマックス過ぎて、相変わらずスゲなぁと感嘆。
加藤さんには明日も会うのだが…。



永井くんと別れて、日比谷へ向かって歩く。
まだ朝8時半という早さだ。
キッズリターン的に言えば
「バカヤロウ、まだ始まってもいねぇよ」だ。


寿司食ったばかりだけど、フレッシュネスでハンバーガー食うことにした。
仕事しながら昼を迎えた。


まだ歩いて行ける距離に築地があるかと思うと、
もう一回寿司を食っておこうという邪念を振り払うことができなくなった。


一人で安めな所に入り寿司を食った。
が、朝食ったソレ(寿司)とは雲泥の差を感じた。
あーこんなにも違うんだと。
グルメぶった自分がいた。


恵比寿へ移動。


仕事の打ち合わせである。
台本書かなければ。


そのまま、恵比寿にて次回フルタ丸の公演に出て頂けるかもしれない俳優さんと会う。
同世代。全く違う所で演劇を創って来たけど、感じるもの、共感できることが多かった。
これまでの10年、僕は積極的に俳優さんと会ってこなかった。
なんで会わなかったのかと言えば、劇団力(げきだんりょく)みたいなものを信じていたから。
確かにそれは今もあるし信じているので劇団をやっている。
けど、それとはまた違う魅力において客演さんと巡り合うってことがある。
今日会った、永井くん然り、加藤さん然り、客演さんである。
客演さんとのつながりは、公演一回だけに収まらない。
一緒に寿司を食いに行くし、早朝からからかいにも行く。
結局、人間対人間って所の魅力は、出会いの数だけあるんだなと思う。



そんな1日でした。