スクランブル事務所
来客が多い日だった。
電気会社、ガス会社、地デジ工事。
この3つ。
入れ替わり立ち替わり3つの業者が事務所に来ては色んなものを取り付けて行った。
そのたびに出迎え「そうですか、そうですか」を連発して対応に追われた。
無事に事務所も地デジ対応になったが、テレビはアナログのまんまだ。
買い替えないと事務所でテレビが見られない。
どうすっかなぁ…。
誰か、地デジ対応のテレビが偶然余っている人いたら、連絡ください。
一個でいいんです、一個ください。
ムシムシした暑さもあって、窓を開けて次回公演のことを考えていたら、
外から
「駄目だーーー」
「ちゃんと蹴ろよ!」
「んなああああああ」
ほとんど奇声のような声が聞こえて、
いよいよ下北沢の治安が悪くなったのかと思ったら、
近所のおっさんが息子に補助輪なし自転車が乗れるように特訓していた。
身を隠すようにして見ていたが、相当スパルタだった。
しかも、こんなせまい道路でやっていたことに驚いた。
自分はどうだったけ。
どうやって乗れるようになったんだったけ。
自転車を乗れるようになった日のことを思い出した。
家の前の道路で…おやじに叱られながら乗れるようになった。
まるで同じだ…。
そう思えたときからは奇声が気にならなくなった。
日没前、
「よーーーーーーし」
というおっさんの声がして、少年は自転車に乗れるようになったらしかった。