「246」は「六本木通り」へと変わる

麻布十番へチラシの折込に行った。
あの街へは電車で行くのが通例であったが、移動費削減のため原付バイクで行くことにした。
折り込んだ帰り道に、六本木のTSUTAYA&スタバで優雅に本を立ち読みした。

ここの本屋は外国みたいだ。
馬事公苑のTSUTAYA&スタバもいいが、ここもいい。
自分の中で「今日はイイ折込だった」という思い出として今日を締めくくれそうだった。
結論から書くと、その後、警察にキップを切られた。


春の交通安全週間かなんだか知らないが、今、警察が都内の至る所に潜伏しているのは知っていた。
通称、ネズミ捕りだ。
僕は僕でネズミとして細心の注意を払っていたはずだった。


帰り道、三軒茶屋の手前で信号待ちをしていると、後ろから肩を叩かれた。
振り向くと、警察だ。
「やれやれ」
きっと村上春樹でもそう言ったはずだ。


僕はどうやら原付バイクが走ってはいけないトンネルを爆走していたらしい。
偉そうに振舞わない丁寧な警察だった。
申し訳なさそうに「君からキップを切る」と宣告された。
それがまたなんとなく腹が立った。
どうであれ腹が立つのだ。


やりきれない。
移動費を浮かせるために使ったはずの原付バイクが5000円という出費に化けた。
悔やんでも悔やみきれない。
「六本木の思い出」はもはや完全に過去のことになった。あんなに楽しかった立ち読み。あんなに香ってきたエスプレッソの匂い。もうすべて昔のこと。

しかし、悔やんでいても仕方がない。
ムシャクシャしていても、何もいいことがない。
幸福は逃げていく。
国道「246」が渋谷を越えると、そのまま「六本木通り」に変わることを知れただけでもいいじゃないか。