誰もいない稽古場で

稽古は6時からだったが、5時ぐらいから一人で稽古場にいた。
自分が演じる所を稽古したり、テラスで寝転がり空を見たりした。
目を凝らしてみると、星が瞬き始めたりしている。
飛行機が飛んでいくのも見えた。影山君のことを思い出した。
フルタ丸のことを考えた。大学を卒業してから今日までのこと。
色んなことがあった。その色々を一つ一つ思い出していた。
その4年という歳月の中で、僕が得たもの、僕が失ったもの。
失ったものの方が少し多いような気がした。
年を取るというのは、何かを得ていくようで、何かを確実に失っていく。
悲しいけれど、悲しんでいる場合じゃない。
『ガイライ魚』、それが今の僕にとって唯一のリアリティだ。
それを届ける。それを届けようとする。そこにしがみついている。