赤い靴ひも

ジリジリと迫り来る引越しに向けて、粗大ゴミを捨てる手配をした。廃棄にもそれなりに金がかかる。いつからこんな国になってしまったんだ。話は変わるが、日本の総理大臣たちを見ていると「俺、一度でいいから、総理をやってみたかったんだ!」「俺、一度総理になったから、日本史の教科書にのるもんねー」そんなノリにしか見えない。お前らの思い出作りは知らん。一度総理になったら、寿命を迎えるまで絶対に辞められないという法律を作ってほしい。



話は引越しの準備に戻るが、粗大ゴミ以外にも、色々と捨て始めた。
今日は、これだ。

靴底がベロベロに剥がれてしまった。


今もそうなのか分からないが、僕が通っていた頃の明治大学は、「体育で使う靴のひもは赤にしなさい!」という謎のルールがあった。学内の明大マートというコンビニで、その赤い靴ひもが大量に売られており、僕らはそれを買わされ、自分の靴のひもを赤にカスタマイズしたのだ。もくろみとしては「ふだん外で履いている靴で体育館に入って来るな!」という警告であったのだろう。とにかく、この靴はその頃から使っている靴だ。大学の授業で一番楽しかったのは、間違いなく大学1年次に履修した、この体育(2単位)だった。ついに、この講義を超える講義は、それ以降の学生生活に現れることはなかった。


僕が体育で選んだ競技は「ゴルフ」だ。演劇学専攻と日本文学専攻の混合授業で、男女比は5対5。大学内に設けられた打ちっぱなし施設で、球を打つ練習をするわけだが、はっきり言ってゴルフなんか真剣にやっちゃいない。体育の水島先生が、気を利かせて、毎回男女を6人ぐらいのチームに振り分けてくれた。だいたい一人が球を打っている間は、他の5人はベンチでのお喋りタイムだ。最初は緊張して話せないが、徐々に「…あ、は、はじめまして」みたいなことになっていく。全体がね。大学の体育の服装は自由なもんだから、女子の自由な服装にドキトキせざるをえない。何度、下着がチラチラっと見えたことか分からない。ある時、男子たちの間で「あれは俺達にわざと見せてるいんだ」という意見が出た。解釈さえも自由だった。当然、僕はゴルフに全く集中できず、ドライバーショットはいつもナナメにしか飛ばなかった。


体育が始まる前のあの胸の高鳴り。「何か起こるかもしれない」という期待感。何にも起こらないんだけどね。けど、何か起こるんじゃねぇかっていうね。あのときめき。