グラスホッパーの記憶

バーを2軒ハシゴすることになり、両方の店でグラスホッパーを飲んだ。


美味かったなぁ。


グラスホッパーは、甘くてチョコミントアイスみたいな、言うなれば男が飲むには少し恥ずかしい代物。
重々承知しているが、僕は大好物だ。
正直、これさえ飲めればバーに行った甲斐を感じて意気揚々と帰ることもできる。


可能であれば、ペットボトル500mlになみなみに注いで、一気に飲み干したい。
カクテルグラスの量じゃ足らないといつも思う。


グラスホッパーを最初に飲んだのは新宿のリフレインというバー。


あの夏、夕方のドラマ再放送で『ビーチボーイズ』を見ながら、
このまま終わって行く夏に抗いたくて、影山くんに電話をかけて、新宿のでかい公園で一心不乱にキャッチボールをやった。
そして、汗だくのまま都庁の展望室まで上がり、新宿の夜景を眺めた後にリフレインへ行ったのだ。


影山くんは何もわからなかった僕にグラスホッパーを薦めてきた。
2人して飲んだはずだ。


結局、『ビーチボーイズ』に出ていた広末涼子が目の前に現れることはなかったあの夏。
抵抗むなしくあっさりと終わっていったあの夏。
グラスホッパーを知ったあの夏。
概ね、満たされない毎日がころがっていた。


その全部がパッケージされている。
あの甘ったるい中に全てがある。


グラスホッパーを飲み続けようと思う。
その裏にある諸々を飲み込もうと思う。


何かが気になりグラスホッパーを素直に注文できなくなった時が、
僕のおしまいのときのような気がする。