時代に負けてんじゃねぇよ

約束していたプールへ娘を連れて行くことになる。
地元の市営プール。ネットで見る限り、まだ営業しているじゃないか。
小学生の頃、しょっちゅう来ていたが、あれから全く来ていなかった。所在地さえあやふやな記憶のまま車を走らせ、だんだん近づくにつれて、そうだそうだ、ここを曲がり、坂を上るのだ、と記憶が追いかけて来る。
確かに、まだ営業していた。

25年ぶりの美濃市民プール

雨が降っていたこともあり、プールの中はガラガラ。
僕らよりも先に入っていた客は2組の家族だけ。
よって、ほぼ貸し切り状態。
屈強なプールの監視員が、広いプール園内に10人くらいいる。客の方が人数が少ない。ほぼ一対一の目で追われる監視率。この空気、どこかで見たことがある。北朝鮮だ。重々しい空気感。しかも曇天、雨降りによる自然のシャワー。スピーカーからは徳永英明のカバーアルバム。寂寥感が半端ない。
子供の頃、さんざん遊んだ長い「滑り台」は「スライダー」に名前を変えていた。けど、実体は同じ滑り台だ。時代に負けてんじゃねぇよ。
およそ2時間、順番待ちの一切ないスライダーを滑りながら、その滑り落ちるスピードの中で、記憶がタイムスリップしていった。当時、このプールで水泳大会があったけど、今は行われているのだろうか。少年野球の合宿でプールに隣接する勤労青少年ホームに泊まって、板の間で寝たな。この朽ち始めているプールはいつか無くなってしまうのかな。色々なことが頭を過ぎった。

家に戻り、仕事を始める。ずっと考えていたアイデアがようやくまとまった気がして、嬉しくなりジョギングに出かける。走りながらアイデアをもう一度吟味する。冷静になって、どうなのかどうか再検討する。考えながら走ると、不思議と体力的には疲れない。脳みそを使う疲れの方が肉体の疲れよりも勝るという話は聞いたことがある。